デンマーク映画『ライダーズ・オブ・ジャスティス』の見どころ !
『アナザーラウンド』などのマッツ・ミケルセン主演によるデンマーク制作のアクション映画。
妻が犯罪組織による暗殺に巻き込まれて命を落としたことを知った軍人が、数学者らの協力を得て復讐(ふくしゅう)に挑む。
監督は『メン&チキン』などのアナス・トマス・イェンセン。
デンマークでは公開されるや大絶賛で迎えられ、2020年NO.1のオープニング成績を記録したほか、第37回ロバート賞(デンマーク・アカデミー賞)で最多15ノミネートを果たし、主演女優賞、助演男優賞、作曲賞、視覚効果賞の4冠に輝いた。
目次
あらすじ
アフガニスタンで任務中の軍人マークスは、妻が列車事故で亡くなったことを知り、娘の元に帰国する。
悲しみに沈む娘マチルデを前にしても、仕事を優先してきたマークスは何もできない。
そこへ数学者のオットーとレナートが訪ねてくる。
オットーは列車で席を譲ったために結果的にマークスの妻を死なせてしまい、その罪悪感に苦しんでいた。
彼は、事故は犯罪者組織が裁判の証人を消すために起こしたものだと確信する。
怒りに打ち震えるマークスは妻の無念を晴らすため、オットーらの協力を得て復讐に身を投じてゆくが事態は思わぬ方向に向かう。
見どころ
物語は、コワモテの軍人が妻と娘の巻き込まれた列車事故にある陰謀が絡んでいたのではないかと疑うところから始まる。
その疑念を植え付けたのは、事件とはまるで無関係な理系オタクの数学者たち。
彼らの理論によれば、犯罪集団「ライダーズ・オブ・ジャスティス」の仕業であることは間違いないというのです。
このことから暴力の連鎖が始まるのですが、暴力的な物語にも関わらず全体的にほっこりとした空気で包まれていることです。
これは多分に数学者たちのでこぼこトリオぶりによるところが大きく、彼らの一挙手一投足を見ているだけで楽しい気分になってきます。
しかし、作品の根底にあるテーマには深く考えさせられます。
本筋の物語を挟むように挿入される冒頭とエンディングのエピソードを見れば、誰もが自身の人生でおきている“偶然”について想像を巡らせることでしょう。
集合体のなかで暮らす我々人間は、誰かのふとした行動によって何らかの影響を受けたり与えたりする可能性のもとに生きています。
さらに、この作品は集合体で生きることの素晴らしさも同時に描いています。
個性あふれるおかしな数学者たちの存在が、まさにこの作品の鍵になっているのです。
世の中には偶然が積み重なって大きな悲劇が起きることがある。
そんな時、私たちはこう思う。これはただの偶然なのか。
それとも何かの意思なのか。そしてそれは避けられたのか。
本作は妻の死から大きな喪失感を抱えた軍人と、数学的才能はあるが大きな欠点を抱えた“変わり者”たちが、犯罪者組織に復讐をしていく物語だ。
マッツ・ミケルセン演じる職業軍人マークスは、職務では有能だが実生活では娘を慰めるどころか自分の心の傷を癒すことさえできない男だ。
理不尽に妻の命を奪われた彼は、その憤りを解消する方法を自分にとって簡単な道、つまり“暴力”によって果たしていこうとする。
だから本作はただの痛快なアクション映画ではない。
ユーモアやエンタメ性は十分にあるが、怒りは喪失感の癒しにはならないことを伝えてくれる作品なのだ。
上映日:2022年01月21日
キャスト
主演を務めるのは“北欧の至宝”と称され、『ファンタスティック・ビースト』『インディ・ジョーンズ』シリーズ最新作への出演も決定し、ハリウッドの第一線で活躍する国際派俳優のマッツ・ミケルセン。
今回で5度目となるアナス・トマス・イェンセン監督の下、復讐の炎を燃やす軍人に扮し、ハードなアクションや重厚な演技を披露している。
さらに、『特捜部Q』シリーズのニコライ・リー・コース、
『セレブレーション』のラース・ブリグマン、
『アダムズ・アップル』のニコラス・ブロらデンマークが誇る名優たちが共演。
マッツ・ミケルセン / マークス・ハンセン役
1965年11月22日デンマーク・コペンハーゲン出身。幼い頃から体操選手として訓練を受け、のちにスウェーデンのバレエアカデミーでダンスを学ぶ。その後演技に興味を持ち、国立演劇学校へ入学。
31歳の時にニコラス・ウィンディング・レフン監督のデビュー作『プッシャー』(96)で長編映画デビューを果たす。
母国デンマーク以外では『007/カジノ・ロワイヤル』(06)、『ドクター・ストレンジ』(16)、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16)等でハリウッドでの功績を残している。
アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた『アフター・ウェディング』(06)ほか数々の作品で卓越した演技を見せ、2011年に世界の映画への貢献を讃えられヨーロッパ映画賞を受賞。
さらに翌年トマス・ヴィンターベア監督作『偽りなき者』(12)でカンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞。
2016年にはカンヌ国際映画祭の審査員を務めた。
2020年にもトマス・ヴィンターベアとタッグを組み、カンヌ国際映画祭でオフィシャルセレクションに選ばれ、アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した『アナザーラウンド』に出演した。
ニコライ・リー・コース / オットー・ホフマン役
1973年5月22日デンマーク・レズオウア出身。
1991年にソーレン・クラグ=ヤコブセン監督の映画『Drengene fra Sankt Petri(原題)』で長編映画デビューを飾り、ロバート賞とボディル賞の最優秀助演男優賞を受賞。
デンマーク国立舞台芸術学校を卒業した1998年に、ラース・フォン・トリアー監督のドグマ作品『イディオッツ』に出演し、再びボディル賞の最優秀助演男優賞を受賞。
その後、スサンネ・ビア監督作『しあわせな孤独』(02)でロバート賞とボディル賞の最優秀助演男優賞を受賞、マーチン・サントフリート監督作『Dirch(原題)』(11)でロバート賞とボディル賞の最優秀主演男優賞を受賞した。
デンマークで最も成功している人気俳優の一人。
アンドレア・ハイク・ガデベルグ / マチルデ・ハンセン役
1998年11月24日デンマーク出身。
演技や歌で優れた才能を発揮する、今後の活躍が楽しみな俳優の一人。
2007年に上演されたミュージカル『アニー』で俳優としてデビューした。
2019年にニールス・アルデン・オプレヴ監督『ある人質 生還までの398日』に出演したほか、舞台「Sanne - The Musical(原題)」でデンマークのロック界の歌姫サンネ・サロモンセンの若い頃を演じ、デンマーク最高峰の演劇賞ロイマート賞のタレント賞を受賞。
また、本作で第37回ロバート賞最優秀主演女優賞を受賞している。
ラース・ブリグマン / レナート・ガーナー・ニルセン役
1957年2月17日デンマーク・コペンハーゲン出身。
1995年『Elsker elsker ikke...(原題)』で長編映画デビューを飾る。
マッツ・ミケルセンと共演し、エミー賞優秀国際ドラマ賞を受賞したTVシリーズ「Rejseholdet(原題)」(00-04)でブレイクを果たす。
ヤニク・ジョハンセン監督作『Hvid nat(原題)』(07)で第25回ロバート賞最優秀主演男優賞に輝く。
また、本作で第37回ロバート賞最優秀助演男優賞を受賞している。
ニコラス・ブロ / ウルフ・エメンタール役
1972年3月16日デンマーク・コペンハーゲン出身。
両親と兄妹が俳優の芸能一家で育つ。
1998年にニコライ・リー・コースと共にデンマーク国立舞台芸術学校を卒業し、同年に第71回アカデミー賞短編映画賞を受賞したアナス・トマス・イェンセン監督作『Valgaften(原題)』に出演する。
『Spies & Glistrup(原題)』(13)、『メン&チキン』(15)で2度のロバート賞に、『Voksne mennesker』(05)、『Offscreen(原題)』(06)で2度のボディル賞に輝く。
グスタフ・リンド / ボダシュカ・リトビネンコ役
1995年6月4日スウェーデン・ベステルオース出身。
マルメシアターアカデミー在学中の2015年、『Cirkeln(原題)』で長編映画デビューを飾る。
TVシリーズ「捜査官エヴァ 孤独の森」(15)への出演により大きな注目を集める。
2019年『罪と女王』でボディル賞最優秀助演男優賞を受賞。
また第71回ベルリン国際映画祭にて、ヨーロッパの有望な若手俳優に与えられるシューティング・スター賞を受賞した。
ローラン・ムラ / カート・“タンデム”・オーレセン役
1972年5月28日デンマーク・オーデンセ出身。
荒れた青年期を過ごし、暴行罪により4年半服役するがオーデンセを離れることを条件に2002年に仮釈放される。
音楽専門の教育機関で学んだのちにコペンハーゲンへ移り、ラッパーのジョクーンへの楽曲提供からキャリアを開始。
2010年『R(原題)』で長編映画デビューを飾り、ボディル賞へのノミネートを果たす。
アルバト・ルズベク・リンハート / シリウス役
2001年7月12日デンマーク出身。
2016年、ロバート賞6部門に輝く『きっと、いい日が待っている』で長編映画デビューを飾り、大きな注目を集める。
2020年にはアカデミー賞国際長編映画賞を受賞した『アナザーラウンド』でマッツ・ミケルセンと共演した。
監督・脚本
アナス・トマス・イェンセン
上映日:2022年01月21日
予告編
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